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美味しいニュージーランドワイン「Cloudy Bay」ができるまで

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僕は24歳の頃に、1年間ニュージーランドに滞在していました。

その時に自分を変えてくれた経験の一つが「ぶどう畑での仕事」でした。

約10年前のお話です。

 

日本人がいない土地を求めて移動した「ブレナム」という町

 

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※ニュージーランドの地図。ブレナムは南島の北端のマールボロ地方の町

 

当時は1ヶ月半の語学学校を卒業したばかりで、特にやることはなく過ごしていました。

大きな街はどこもアジア人ばかりで、僕が当時住んでいたクライストチャーチにも日本人がたくさんいました。

 話そうと思えば日本語でも生活できる環境を変えたくて、知人の勧めで日本人のほとんどいない町を教えてもらいました。

 

それがブレナム(Blenheim)という、ワインで有名なマールボロ地方の町。

 

畑以外は特に何もないような街で、僕は駅から遠く離れた個人経営のポットシェド(Pot shed)というファームワーカーが集まって住んでいたバックパッカーに滞在することとなりました。

女子部屋のドミトリー(4人部屋)での生活

 

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僕は滞在翌日から、宿のオーナーが斡旋してくれたぶどう畑で働くことになりました。

 

宿には沢山の人がいて、自分の使うベッドが「女子部屋」の二段ベッドしか空いていなくて、ドイツ人女性2人と、マレーシア人女性との4人部屋を使うように言われ、いきなりの試練。

 

色んな意味でその滞在も大変でした

※着替えにくいし、下着を所構わず干してるし、ドイツ語ばかりでほとんど会話がわかんなかったし

 

そして初仕事

 

働き始めた時期が冬だったので、想像していた楽しいぶどう狩りのイメージは早くも崩れ去りました。

 

広大な畑に降ろされ、続々と集まる労働者たち

 

日本人は自分1人、ほとんどが地元ニュージーランド人とヨーロッパ(イギリス、ドイツ、フランス、チェコ)でした。

 

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※だだっ広い畑だけど、ブドウの木は見当たらない

 

畑から生える不気味な白いスティック

 

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※初仕事は、一列に並んだ白い棒をはさんで2列に並び、引っこ抜く!若かりし頃の僕は黒いフードを被ってます(右側)

 

畑を見渡すと、土から何か白い「棒のようなもの」がたくさん生えていました。

 

聞くとこれはぶどうの苗木だそう。

 

自分の想像していた葡萄の樹の姿とは違い、白い幹とそこから不思議な形で伸びている茶色い枝。

 

話を聞いてみると、ぶどうの樹はとある理由から、「接ぎ木」をして別々の品種(種類)の樹をくっつける必要があると教わりました。

 

「この畑は、その「接ぎ木」によってくっつけられた苗木が植えられているんだ」

 

ワインやブドウの樹について全くの無知だった私は、異様な光景にただただ唖然とするばかりでした。

 

ブドウの苗木を接ぎ木する理由は「フィロキセラ」という害虫対策

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葡萄には「フィロキセラ」という、天敵がいます。

 

このフィロキセラは、ブドウの根に寄生して枯らせてしまうという害虫なのですが、その昔、アメリカから持ち込まれた苗木が原因で、フィロキセラの耐性が無かったヨーロッパの苗木は壊滅状態に陥ったというのは、とても有名なワインの歴史の一つです。

 

世界中の葡萄の樹を枯らせてしまうほどの勢いだったフィロキセラ対策としてとられたのが「接ぎ木」という方法でした。

 

フィロキセラに耐性のある苗木を使うというシンプルな方法もありましたが、美味しいワインを作るのに必要な元々ヨーロッパに根付いていた品種を使いたかったため、フィロキセラに耐性のある品種の根の部分と、ヨーロッパの品種を接ぎ木しているのです。

 

僕が働くことになった畑では、その接ぎ木による苗木の生育と出荷をメインに行っている畑だったんですね。

 

こうして、僕の初仕事は「地面から棒を引っこ抜く」という奇妙なものとなりました。

 

そして、その後の滞在期間中にする、どの畑仕事よりもハードなものでした

想像以上にハードな仕事

 

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※その後しばらくの間行動を共にすることになるドイツ人のダニエル。仕事の姿勢は常時こんな感じです。

 

何がキツイかと言うと、常に中腰で約30センチの長さの苗木を手で黙々と引き抜くのです。

 

トラクターが最初に土を掘り起こして抜きやすくするのですが、凍った地面や雨の日などは、土が重くなり一本のスティックを抜くのに全力が必要でした

 

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※こんなに湿った泥の時は、本当に苗木一本一本が地面深くに突き刺さっているようで、どんだけ力いっぱい引っ張っても抜けないこともザラでした。

 

こうして引き抜いた苗木は、倉庫に送られ、30本単位で束ねて根を切り、ぶどう農家に売られて行きます。

 

このような工程は、一般の人やブドウの苗木を買って育てている人はあまり知ることないものだと思います。

 

この仕事を始めて1週間もしないうちに、僕の両手の指の関節はおかしいほどに腫れあがり、当時、右手の人差し指にしていた指輪は、薬指の第1関節も通らないほどでした。

 

毎朝目が覚めるとすべての指の関節が猫の手のように曲がっていて、そのこわばった指の関節を一本一本ストレッチをしながら開くという作業で一日が始まりました。

 

「とんでもない畑に配属されてしまった」

 

当時はそう思いました。

 

働いていたのは有名なワインメーカーだった 

 

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※畑にはリーダーの買ってる犬がいつもいた。ご覧の通り泥だらけ。休憩時間に泥だらけの体でダイブしてくる可愛い奴でした

 

その畑は2ヶ月ほどいて、仕事場で仲良くなったドイツ人3人組とその後旅に出ました。

 

自分にとっては完全英語環境で、日本語なしで過ごした初めての2ヶ月間。大変なこともありましたが、英語力も含め、自分をとても成長させてくれた場所でした。

 

そんな僕が働いていた畑の名前は「クラウディーベイ(Cloudy Bay)」と言います。

 

日本に帰国後、ワイン好きの友人に自分が働いていた畑の名前を言うと、

 「そこのワイン有名だよ」と教えてくれました。

 

ニュージーランドのワインは、最近ではかなり一般的になってきていて、日本のスーパーでも見かけるようになりました。 

 

ニュージーランドのワインは美味しいよ!と世界的に知られるきっかけになったのが、このCloudy Bayの「ソーヴィニョン・ブラン」という白ワインです。

 

以前住んでいた東京都北区のスーパーにもあり、日本にも割と流通しているワインのよう。

 

自分が引き抜いた、あの苗木のブドウからできたワイン。

飲んでみると、スキッとしていてフルーティーな味わいでとてもおいしいです。

 

自分のあの時の苦労が、こうやって美味しいワインになって日本で飲めている。

 

このワインを飲むときは、いつもあの当時の畑仕事と、一緒に仕事をした面々を思い出します。

 

ニュージーランドにまで行って、雪のちらつく早朝に、凍えながら地面から生える白い棒を引き抜いているときは「自分は何をしているんだろう」と思いもしましたが、今思えばいい経験です。

 

いつかは息子と飲みたい

 このクラウディーベイ(Cloudy Bay)のワインは、いつか息子が成人した時に、「実はお父さんが若い時に働いていたワイン畑のものなんだよ」といって、飲むのが今から楽しみなのです。

 

30歳を過ぎた今でも、まだあまりワインの味は分かりませんが、自分の若い時の話を息子にしながら飲むこのクラウディーベイのワインは、きっと美味しいと思います

※息子にはメンドくさがられるかもしれませんけどね

 

 

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